近年、歯科医療を取り巻く状況が大きく変わりました。予防の大切さが認知され予防処置を受けるために定期的に歯科医院に通う方が増えているのです。多くの研究により口腔内の細菌が全身の疾患に関連していることが証明され、むし歯や歯周病を予防するために(口腔内細菌の管理を行うために)歯科医院に通うことが、全身疾患の予防につながることが分かったのです。本当に病気の予防ができるのは歯科なのかもしれません。
「健康増進法」に基づき策定された「健康日本21」にも主要な病気の根本療法が、栄養・運動・休養・禁煙・節酒・歯の健康の6要因の管理であると記された事も口腔の健康の重要性に関心が高まった要因です。さらに歯科医療は、小児から高齢者まで、切れ目なく通うという医科にはない特徴があります。ライフステージごとに長期にわたって関与できることは、口腔細菌管理のみならず、食生活などを含めた保健指導を行う上で非常に大きなアドバンテージであり、健康寿命の延伸に貢献できると思っています。
さらに近年は、高齢者施設や病院での口腔ケアや摂食嚥下などの分野での需要も高まっています。また厚生労働省が在宅医療を進める中、訪問歯科診療の需要も高まっています。歯科医師過剰などと言われていますが、団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、訪問診療や口腔ケアのニーズが高まる事が予想され、歯科医療者はかなり不足するのではと危惧しています。飛騨地区の広大な面積を少ないマンパワーでどうカバーするか、問題は山積していますが、これらの分野でも行政と協力して取り組んで行きたいと思います。
歯科というと以前は行きたくない場所の上位に入ったのではと思います。ところが近年は行きたい場所になりつつあるようです。専門家が行う予防処置は、治療とは違いとても快適で毎月通いたいという方もおられます。歯医者が嫌われる存在ではなく愛される存在になる事を願いつつ、高山歯科医師会は地域医療に貢献し健康寿命の延伸に寄与していきたいと思っています。
令和6年12月 大埜間 勉